キジトラを迎えて最初の頃、「添加物の少ないものを食べさせたい」と思って手作りごはんを試みた。鶏のむね肉と野菜を組み合わせて、なんとなく体によさそうなイメージで作り続けた。1ヶ月ほど続けて、定期健診で獣医にその話をしたとき、「やめたほうがいいです」とはっきり言われた。
その一言で手作りをやめた。今は完全に市販フードに戻している。
この記事でわかること
- 猫の手作りごはんで起きやすい栄養の問題
- 絶対に与えてはいけない食材とその理由
- 獣医に聞いた正直な見解と、現実的な落としどころ

猫に手作りごはんを試した話:やめた理由
きっかけは「添加物が気になる」という気持ちだった
キジトラを迎えたのは3年ほど前だ。それまで黒猫1匹にドライフードを与えていたが、2匹目を迎えたタイミングで「せっかくだから食事も見直そう」と思い始めた。
当時、市販フードの原材料表示を見ると、聞き慣ない添加物の名前がいくつも並んでいた。「もっとシンプルな食事の方が体にいいのでは」という気持ちから、手作りを始めた。
1ヶ月で気づいた問題点
鶏むね肉・ブロッコリー・かぼちゃを茹でて細かくしたものを主食にした。猫たちは最初こそよく食べていたが、2週間ほどで食いつきが落ちてきた。
同時に実感したのが、一人暮らしで継続することの難しさだ。食材を使い切れずに廃棄することが増えた。調理時間も想定より長く、朝の準備が面倒になってきた。月に1,500〜2,000円程度の食材ロスが出ていた。
決定的だったのは、定期健診で獣医の先生に話したときだ。「手作りごはんで総合栄養食と同じ栄養バランスを実現するのは、専門的な知識がないと難しいです。添加物より栄養バランスの方が重要です」と言われた。
猫の手作りごはんが難しい理由:栄養バランスの問題
猫が必要とする栄養素とその難しさ
猫は「偏性肉食動物」と呼ばれ、犬や人間とは異なる栄養要求を持っている。市販の総合栄養食は、AAFCOという国際基準を満たすように設計されているが、家庭の手作りでこの水準を達成するのは容易ではない。
特に難しいのが、猫が体内で合成できない栄養素の補給だ。以下はその代表例だ。
- タウリン:猫は体内でほとんど合成できないため、食事からの摂取が必須。不足すると拡張型心筋症や網膜変性症を引き起こすリスクがある
- アルギニン:猫にとって必須アミノ酸。一食でも不足すると高アンモニア血症のリスクがある
- アラキドン酸:猫が体内合成できない脂肪酸。炎症反応や免疫機能に関わる
これらは市販の総合栄養食には適切に配合されている。手作りでまかなうには、意識的に食材を選ぶだけでは足りず、必要に応じてサプリメントで補う必要もある(ねこのきもちWEB MAGAZINE参照)。
タウリン不足が引き起こすリスク
タウリン不足は、外見では気づきにくい。じわじわと影響が蓄積し、症状が出たときには病状が進んでいるケースがある。
拡張型心筋症は心臓が拡大して機能が低下する疾患で、タウリン不足が一因とされている。網膜変性症は視力の低下・失明につながる。どちらも手作りごはんを長期間与えた猫で報告されている事例だ。
「うちの猫は元気そうだから大丈夫」と思っていても、栄養不足の影響は数ヶ月〜数年かけて表れることがある。これが手作りごはんのリスクを見えにくくしている理由の一つだ。

絶対に与えてはいけない食材
中毒を起こす食材リスト
手作りごはんを作る際、誤って危険な食材を使ってしまうリスクもある。以下は猫に与えてはいけない代表的な食材だ(ASPCA Animal Poison Control Center等の情報を参照)。
| 食材 | リスク |
|---|---|
| ネギ・玉ねぎ・ニンニク・ニラ | 赤血球を破壊し、ハインツ体貧血を引き起こす |
| ブドウ・レーズン | 腎不全のリスク(少量でも危険。原因物質未解明) |
| チョコレート・カカオ | テオブロミンによる中毒(嘔吐・下痢・痙攣) |
| キシリトール(ガム等に含まれる) | 低血糖・肝不全のリスク |
| 生魚の継続摂取 | チアミン(ビタミンB1)欠乏を引き起こす可能性 |
| アボカド | 嘔吐・下痢・呼吸困難の報告あり |
| 生卵白 | アビジンという成分がビオチン吸収を阻害 |
危険食材の詳細についてはねこのきもちWEB MAGAZINE 猫に食べさせてはいけないものも参照してほしい。
「少量なら大丈夫」が通じない理由
ネギ類やブドウは「少量なら問題ない」と思われがちだが、猫に対してはこの認識は危険だ。特にネギ類は、加熱しても毒性が消えない。料理に使った鍋の汁が残ったものを食べさせるだけでも中毒のリスクがある。
猫は体が小さいため、人間にとっての「少量」でも致死量に達することがある。「食べてしまったかもしれない」と思ったら、すぐに動物病院に連絡することが重要だ。
獣医に聞いた正直な見解
定期健診でかかりつけの先生に手作りごはんの話をしたとき、こう言われた。
「添加物を気にする気持ちはわかるけど、国内で販売されている総合栄養食の添加物は安全基準を満たしています。それより心配すべきは栄養バランスで、手作りで毎食きちんと補えるかどうかのほうが難しい問題です」
さらに「手作りをどうしても続けたいなら、獣医栄養学の専門家に相談してレシピを作ってもらうのが前提です。見様見真似でやると、数年後に栄養性の疾患が出ることがある」とも言われた。
市販フードへの不信感から手作りを始めたのに、結局「市販フードのほうが栄養管理の観点では優れている」という結論になった。これが一番正直な感想だ。
手作りにこだわるなら:現実的な落としどころ
手作りごはんへの関心を完全に否定するわけではない。猫の食事に興味を持つことはいいことだし、食材の選択が気になる飼い主の気持ちも理解できる。
どうしても手作りを取り入れたいなら、以下を前提にしてほしい。
- 基本は市販の総合栄養食をメインにする。手作りは「おやつ」「トッピング」程度の位置づけにとどめる
- 危険食材のリストを確認する。ネギ類・ブドウ・チョコレートは絶対に使わない
- 獣医栄養士に相談する。手作りレシピを本格的に作りたい場合は、専門家のサポートを受ける
- 定期健診で血液検査を行う。栄養バランスの問題は外見では気づきにくいため、定期的な検査で確認する
うちの場合は手作りをやめて、市販フードのドライとウェットを組み合わせる形に落ち着いた。黒猫の膀胱炎歴を踏まえてウェットで水分を補い、2匹とも体調は安定している。
まとめ
猫の手作りごはんは「自然でシンプルなものを食べさせたい」という気持ちから始まりやすいが、実際には市販の総合栄養食より栄養管理が難しい。タウリン・アルギニン等の必須栄養素を手作りで適切に補うには、専門的な知識が必要だ。
危険食材の誤使用リスクも見過ごせない。ネギ類・ブドウ・チョコレートは猫にとって致命的な食材になりえる。
獣医に言われた「添加物より栄養バランス」という言葉は、今でも正しいと思っている。市販の総合栄養食を基本にしながら、猫の状態に合わせてフードを選ぶほうが、現実的で安全な選択だ。
キャットフード選びについてはこちらも参考にしてほしい。

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