ペット保険はいらない、と3年間思っていた。
理由は単純で、「貯金があれば大丈夫」という判断だった。30代・IT系・一人暮らし。手持ちは300万円台。毎月の保険料を払い続けるよりも、その分を貯金に回したほうが合理的だと考えていた。
結論から言う。今は加入している。考えを変えたのは、膀胱炎の治療費が約15万円かかった4年目の秋だった。
この記事は「ペット保険 猫 いらない」と思っている人に向けて、僕がどう判断を変えたかを書く。一般論やマトリクスは別の記事に任せて、ここでは自分の体験と家計の数字だけを正直に書く。
この記事でわかること
- 「いらない」と判断していた3年間の根拠
- 膀胱炎で考えが変わった瞬間
- 加入後に気づいた「数字以外のメリット」

最初の3年間、なぜペット保険に入らなかったのか
「貯金があれば大丈夫」という判断
猫を迎えた当時、貯金は300万円台だった。
保険の話を調べると、「貯金が十分にあれば保険は不要」という意見が出てくる。補償割合は50〜70%が一般的で、残りの30〜50%は自己負担のまま。掛け捨てだから、使わなければ丸々損する。
この考え方は論理的だと思った。健康な猫を飼っていて、毎年の医療費が1〜2万円程度で収まっているなら、月3,200円の保険料は「高い出費」に見えた。
1年目・2年目・3年目と続けて平穏だったので、「やっぱり入らなくて正解だった」と思っていた。
猫を飼い始めてから調べると「ペット保険は掛け捨て。使わなければ丸損」という意見が必ず出てくる。これは事実だ。補償割合は一般的に50〜70%で、残りの30〜50%は自己負担のまま。保険料を払い続けて何も起きなければ、その分は返ってこない。
「30代・IT系・貯金あり・一人暮らし」という状況で、掛け捨てに月3,200円を払うのは合理的じゃない——そう判断していた。
月々の保険料が「もったいない」と感じていた
月3,200円は年間38,400円になる。3年続けると115,200円だ。
その間にかかった実際の医療費を出してみると、3年間で約5.7万円だった(定期健診・ワクチン・外耳炎1回)。つまり保険に入っていたとしても、払った保険料に対して実費はかなり少ない計算だ。
「やっぱり貯金で十分だった」という判断を、この数字が強化していた。

一方で、保険の話をペット友達に聞くと「私は入ってる」という人の方が多かった。「不安だから」という理由で入っている人が多い印象で、「論理的に計算して入った」という人はあまりいなかった。
「保険は感情で入るもので、合理的に考えれば不要」という自分の判断は、まあ正しいんじゃないかと思っていた。
4年目:膀胱炎で約15万円。考えが変わった瞬間
深夜に急変してから翌朝の診断まで
4年目の秋の深夜、トイレに何度も行くのに尿が出ない状態が続いた。
黒猫はオスで、オス猫の下部尿路疾患は命に関わることがある、というのは事前に調べていた。「様子を見るか、すぐ行くか」。相談できる相手はいない。一人で判断した。
深夜2時、夜間救急クリニックに電話して「すぐ連れてきてください」と言われた。タクシーで向かった。
初診の夜だけで処置代・検査代・点滴で2.2万円かかった。その後1週間、計3回の通院が続いた。1回あたり1.2〜1.5万円。超音波検査が1.8万円。薬代が5,000円。
最初のクールだけで約8.5万円になった。
内訳はこうだ。
- 夜間救急(初診・検査・点滴):約2.2万円
- 翌日以降の通院(3回):各約1.2〜1.5万円
- 超音波検査:約1.8万円
- 薬代(1週間分):約5,000円
夜間救急のタクシー代(往復で約2,000〜3,000円)は医療費とは別に出ている。一人だから当然一人でタクシーに乗って連れて行く。「これが続いたらどうする」という感覚は、このあたりからあった。
と思ったら、2ヶ月後に再発した。
2度目のクールで約6.5万円。
合計で約15万円。
猫の医療費の一般的な目安として「尿石症・膀胱炎で12万円程度」という数字がある(複数の保険会社サイトに掲載されている情報)。僕の場合は2クール経験したので15万円になった。1回ならギリギリ「貯金の範囲内」だったが、2回続くと「これがまた来るのか」という見方に変わった。
15万円の請求書を見たときに何を考えたか
金額がきつかった、というよりも「これが続く可能性」が頭を占めた。
膀胱炎や下部尿路疾患は、体質によって繰り返すことがある。獣医からも「また同じ状態になることがあります」と言われた。あくまで一般的な傾向として、という話だったが、次の年も15万円かかるかもしれないと考えると、年間33万円が消える計算になる。
3年間の保険料の合計は約11.5万円だった。15万円の治療費1回分にも届かない。
「貯金で大丈夫」は、「大きな治療が来なければ大丈夫」だった。
1回の出費なら耐えられる。2回続くと「3回目が来たら」という想定が出てくる。そしてその「3回目」が来たときのことを考えると、「貯金があるから大丈夫」という前提が揺らいだ。
貯金は「あった」。でも、「猫の医療費に全部使うわけにはいかない」という感覚もあった。30代・一人暮らしで300万円台の貯金は、老後・急な転職・住宅など別の目的もある。「猫のための緊急予備費」だけに充てられるわけじゃない。
ペット保険加入者の約44%が「予期しない突発的な支出に備えたい」という理由で入っている、という調査結果がある(価格.com保険の調査)。またペット保険の補償設計や注意事項については消費者庁の保険に関するガイドも参考になる。この感覚は、実際に経験してみて初めてリアルに分かった。

「一人暮らしで保険なし」の構造的なリスク
保険の話を数字だけで考えると「貯金があれば不要」という結論が出やすい。でも、一人暮らしの場合は「判断する相手が自分だけ」という構造的な問題がある。
4年目の深夜。トイレに何度も行くのに尿が出ない状態を見て、「これは朝まで待てるのか、今すぐ夜間救急に行くべきか」を一人で判断しなければならなかった。
猫に関して詳しい人間が近くにいれば「どう思う?」と聞ける。でも一人だと、深夜にスマホでリサーチしながら判断する。そのとき頭にあったのは「救急に行って大したことなかったら2万円無駄になる」という考えだった。
保険に入っていれば、この「受診をためらう思考」が出にくくなる。「お金がかかるから様子を見よう」が「気になるなら早めに行こう」に変わる。早期発見・早期治療は結果的に治療費を抑えることにつながる、とかかりつけ医に聞いたことがある。
これは「保険の感情的なメリット」として一般的に言われていることだが、実際に4年目の経験をしてから初めてリアルに感じた。
加入を決めた理由:貯金額と月収で判断した
貯金300万円台でも「続く可能性」が怖かった
300万円台の貯金があれば、一度の出費は耐えられる。でも、繰り返すなら話が変わる。
膀胱炎を2クール経験して「今後も慢性疾患として管理が必要になる可能性がある」と感じていた。治療費が年15万円かかる状態が3〜5年続いたとしたら、合計45〜75万円になる。
月収からペット費用の比率を計算してみた。保険料5,100円(黒猫3,200円+キジトラ1,900円・2匹目を迎えた後)は、月収の1%に届かない。これなら払い続けられる範囲だと判断した。
保険料は月3,200円。払い続けるコストとの比較
加入を決めた段階では、まず黒猫だけで月3,200円のアニコム損保「どうぶつ健保ふぁみりぃ」に入った。
年間38,400円。10年続けると384,000円。この「長期のコスト」は確かに重い。
ただ、黒猫はすでに膀胱炎の既往がある。「これからどんな疾患が出てくるか分からない」という状態で、今後10年分の医療費を全額自己負担するシナリオの方が怖かった。
今の結論:加入して良かったか、後悔はないか
加入した翌年、黒猫の定期健診で軽い異常値が出て、追加の血液検査と1ヶ月の経過観察が必要になった。費用は合計で約2.5万円。保険で7割近くが戻ってきた。
実際に請求してみて気づいたのは、「手続きが思ったより簡単だった」ということと、「保険があると受診のハードルが下がる」という話だ。
これは数字には出ない話だが、一人暮らしの場合は特に効いてくる。相談相手がいない状況で「お金のことが気になって受診を迷う」という思考が、保険に入ってから減った。気になったらすぐ連れて行ける、という精神的な余裕は、個人的にはかなり大きかった。
アニコムの場合、診察時に保険証を提出するだけで窓口での精算が完結する「窓口精算」が使える動物病院が多い。保険請求のための書類手続きが不要で、実費の30〜50%を窓口で差し引いた金額を払うだけで済む。「保険証を出すのを忘れた」というミスが3回に1回くらいあるが、それ以外は思ったよりスムーズだった。
加入後の1年間で、小さな通院が2回あった。片方は軽い結膜炎で約4,000円、もう片方は血液検査の異常値確認で約2.5万円。合計で約2.9万円。保険で約2万円が戻ってきた。
保険料が年間38,400円に対して戻りが約2万円——この1年だけ見れば「払い損」だ。でも、「今年も何も起きなかった」ことが分かっている状態でそれを言っても意味がない。来年また膀胱炎が再発するかもしれない状況で、「今年は元が取れなかった」と解約する気にはなれなかった。
後悔はない。ただし、「最初から入っておけばよかった」とも思っている。4年目に15万円使ってから入るより、1年目から入って平穏な年の保険料を積み上げた方が、トータルでは安かったかもしれない。それは今となっては分からないが。
まとめ:「いらない」と言い切れる人の条件
今の僕から見て、ペット保険が「本当にいらない」と言い切れるのは以下のケースだと思う。
- 貯金が500万円以上あり、50万円規模の突発出費を複数回受けても家計が揺れない人
- 猫が若く(3歳未満)、慢性疾患・遺伝的リスクが低い猫種で、今後の医療費が低く見積もれる人
- 保険料を支払い続けることのストレスが、突発的な出費のリスクより大きく感じる人
僕はどれにも当てはまらなかった。
「いらない」と思っていた3年間を後悔しているかというと、そうとも言い切れない。その3年間の判断は、その時点の家計・猫の状態から見れば一応合理的だった。ただし、「突発的な疾患が来たとき」というシナリオを、軽く見すぎていた。
一人暮らしで猫を飼っていると、突発的な大出費への対応を一人でしなければならない。「貯金があれば大丈夫」は正しいが、「貯金が削れる不安を一人で抱えながら通院を続ける」ことのコストは、保険料という形でアウトソースできる。
それが今の僕の考え方だ。数字だけで判断するなら「保険は不要なケースもある」。でも、数字以外の「心理的コスト」も含めると、30代・一人暮らし・貯金300万円台という状況では「入って良かった」という結論になった。
貯金が「ゼロになることはない」程度にあっても、突発的な大出費が「続く可能性」がある場合は、保険の方が精神的なコストが低かった。これが30代独身・IT系の一人暮らしが出した結論だ。
猫種・年齢・一般的な判断マトリクスについては別の記事で整理している。
最後に一点だけ補足しておく。「今は健康だから入らなくていい」という判断は、「健康なうちに入る」の逆だ。保険の加入条件は若くて健康なほど有利で、既往症があると除外条件がつく可能性が上がる。「病気になってから入ろう」は、多くの場合遅すぎる。
「迷っているなら若いうちに入れ」とまでは言わないが、「大きな疾患が来てから後悔する前に検討しておく」価値はある。それが3年間遅れた僕の、唯一と言えば唯一の反省点だ。


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